1 珠算教育 2 珠算の学習指導 3 珠算式暗算法 4 珠算開法 5 特別算法 6 商業計算1 7 商業計算2 8 商業計算3 9 珠算の検定試験 10 珠算の競技会 11 珠算作問法 12 特殊問題の作問と利用 13 珠算学校・塾経営の実際 14 珠算と計算機 15 日本珠算史
■1 珠算教育(品切)
兼子誠次執筆
学習者の素質に対応する環境・内容・方法について記述
第1章 教育とは
第2章 教育の目的
第3章 学習
第4章 珠算指導(その1)
第5章 珠算指導(その2)
第6章 珠算指導(その3)
224頁 本体1,456円+税
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P.1
第1章 教育とは
学校教育・家庭教育・社会教育・現職教育・新入社員教育・再教育・生涯教育・珠算教育等々。さらには,教育立国・教育者・教育産業・教育機器・教育ママ・教育不在など,私たちの周辺には,なんと多くの「教育」ということばが使われていることだろうか。最近は,「珠算教育士」という新語さえ生まれている。
教育とは,何であろうか。
1.教と育
教育ということばは,「教」と「育」を合わせた熟語である。古くは,「孟子」(論語・大学・中庸と配して,いわゆる四書のうちの1つ)に,このことばが出ている。少し長いが,その文章を示してみよう。
…(略)…
■2 珠算の学習指導
伊藤善仁執筆
数概念の養成から、計算原理の理解と問題解決までを解説
第1章 珠算の学習指導のあり方
第2章 そろばん
第3章 珠算指導の基礎
第4章 加法・減法の指導
第5章 加法・減法指導の実際
第6章 乗法・除法の学習指導のあり方
第7章 乗法指導の実際
第8章 除法指導の実際
第9章 定位法指導の実際
256頁 本体1,456円+税
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P.1
第1章 珠算の学習指導のあり方
1.珠算と発達的特質
◇1◇ 心理的な関係
珠算の学習指導において,もっともたいせつなことは,指導者が学習者の心身の発達に留意することである。特に,学習者が小学校低学年の場合は,さらに細かい配慮が必要である。それは,教材,学習の方法,学習量などを学習者に合わせることである。これを無視しては,学習の良い結果は望めない。
珠算と関係があると思われるものに,運動,知覚,記憶,思考,知能,言語,情緒などの発達がある。
このうち,情緒は関係がないと思われがちだが,そうではない。
指導者と学習者の間に人間的な信頼関係が確立されていないと,学習はうまくいかない。喜怒哀楽の変化の激しい低学年児童の実態を知っておくことは特にたいせつである。
小学校1年生の先生に対する意識は,遊んでくれる先生が大好きなのである。4年生以上ぐらいになると,じょうずに教えてくれる先生が好きなのである。
小学校の算数は,児童の発達を十分検討した上で学習内容が作られている。算数で四則の導入が一応終了するのは3学年である。
導入だけでこれだけの年月をかけているのである。
…(略)…
■3 珠算式暗算法
曽我和三郎執筆
珠算式暗算を科学的に解明し指導を容易にした画期的内容
第1章 珠算式暗算の意義
第2章 珠算式暗算の実体
第3章 珠算式暗算の実用性
第4章 珠算式暗算の指導法
第5章 まとめ
付 録 全珠連暗算検定試験問題
208頁 本体1,456円+税
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P.1
第1章 珠算式暗算の意義
1.珠算式暗算とは何か
小学生から大人に至るまで,日本人は暗算が優れていると言われる。確かに,このことは諸外国を旅したことのある者は,実感として肯定できる。
また,計算カという点で,日本の小学生が世界一の折り紙をつけられたとしても,それは,わが国における初等算数教育の成果であるが,その根底には暗算カが働いている。筆算における加減乗除は,部分計算を暗算で行ないながら運算をくりひろげ続けていくからで,筆算は暗算の上に成り立っており,筆算は暗算の舞台でもある。しかしながら,この暗算は,かつて萩原義雄氏が「そろばん心理学」の中で述ぺた,〝概念暗算〟ともいうべきもので,萩原義雄氏によれば,いかなるものにもよらず,ただ直覚的に結果を知る場合,これを概念暗算と呼ぶことができると述べており,珠算式暗算とは異質のものである。そして,筆算の形式による演算を,紙に書きつけることなく計算するのを筆算式暗算ということができよう。
これに対して,そろばんを使わず,そろばんの心象により珠算式に演算する計算を珠算式暗算という。
…(略)…
■4 珠算開法
荒木勲執筆
開平・開立の算法を平易に改良し、問題を分類した好著
第1章 総論
第2章 開平
第3章 開立
第4章 不等辺開平
第5章 不等辺開立
付 録 全珠連段位開法問題
224頁 本体1,456円+税
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P.1
第1章 総 論
1.総 説
◇1◇ 意 義
ある数Aが,他の数Xのn乗に等しいとき,〝A〟から〝X〟を求める計算を,〝開法(または開方法・開方)〟という。
上の場合,
AをXのn乗巾(冪)
XをAのn乗根
という。
うち,nが2または3について,
自乗巾を〝平方〟 自乗根を〝平方根〟
三乗巾を〝立方〟 三乗根を〝立方根〟
という。他は〝四乗巾・四乗根〟などのようにいう。
また,
平方から平方根を求める計算を,〝開平(かいへい)〟
立方から立方根を求める計算を,〝開立(かいりつ,または,かいりゅう)〟
という。
…(略)…
■5 特別算法
土師民三郎・荒木勲執筆
各種の簡便算と省略算を記述し、帰除法についても解説
第1章 負数計算
第2章 乗法
第3章 除法
第4章 省略算
第5章 帰除法
216頁 本体1,456円+税
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P.1
はじめに
計算をしようとする数が,特別な数の配列になっていたり,計算の途中で特別な数の配列になったとき,その数の性質を応用して,その数の一部分または全部を変えて計算することによって,計算の方法を変えたり,計算の手数を省略することができる。
また,補数の性質を利用して,計算の手段を変えたり,計算の手数を省略したりすることもできる。
このように,与えられた数を変形したり,計算手続きを変更したり,あるいは,計算の途中で特別な操作を行なうことを,一般に特別算法と呼んでいる。
特別算法は,特に補数を利用することが多いから,補数の性質を十分理解し,補数計算について,その方法を習得しておかなければならない。
この特別算法の中には,普通算法と同じように,一部では常用されているものもあり,過大商除法のように,普通算法の中の一手段として,混用されているものもある。
特別算法は,普通算法と比べて,計算を簡略にするということが,その目的である。しかし,中には理論上では計算ができても,実際は,かえって複雑な計算となったり,思考を必要とするようなものも含まれている。本書においては,できるだけ,そうした算法をさけて,日常の計算や,応用計算などに利用できるものを取り扱うことにした。…(略)…
■6 商業計算1
山田貞蔵執筆
歩合を主に、度量衡と換算、不十進数、減価償却等を解説
第1章 商業計算の基礎
第2章 証券投資に関する計算
第3章 減価償却に関する計算
付 録 応用計算問題
208頁 本体1,456円+税
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P.1
第1章 商業計算の基礎
1.割合に関する計算
◇1◇ 歩合算について
歩合算は,実務におけるすべての計算の基礎となるものであって,この基本的数理を応用して行われる計算である。したがって,歩合算を確実に理解させ,具体的な事実問題に対して,これをどのように適用させるかに,指導者は留意しなければならない。
また,歩合算は定位法を十分に理解させるとともに,特別算法を活用することによって,その価値が高められるように指導することが大切である。
◇2◇ 量の観念と単位
量はすべて大きさをもっている。同種の2量については,その大きさを比較し,大小を識別し得るものである。そこに量の大小観念の発生の端緒がある。そうして,進んでは,量の大小の比較を正確にするために,各種の量について,それぞれ大きさの基準,すなわち単位を定め,大小を決定せんとする量が,この単位の何倍あるかによって,その量の大きさを表わすに至るのである。ゆえに指導の段階としては,最初学習者の生活環境の中に存在する事物現象をもって,その量の大小を比較させる。
…(略)…
■7 商業計算2
野田清・中川家治執筆
実務を中心に売買と各種の売買費用に関する計算等を解説
第4章 売買に関する基礎計算
第5章 売買に関する計算
第6章 売買費用に関する計算
第7章 貿易に関する計算
第8章 商品棚卸価額と商品評価損・商品棚卸差損の計算
第9章 期間損益の計算
第10章 財務分析の計算
付 録 応用計算問題
208頁 本体1,456円+税
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P.1
第4章 売買に関する基礎計算
1.代価の計算
商品の取引数量は,その取引される商品により,100箱,100袋などのように個数で決められるもの,100kg,10tなどのように重量で決められるもの,50Lなどのように容積で決められるもの,1mなどのように長さで決められるものなどがある。
商品の代価は,一般に単価に数量をかけて計算する。単価は一定の数量を基準として,これに対する金額で表わされる。この基準となる一定の数量を建という。建には数量を基準とする数量建と,金額を基準とする金銭建がある。数量建は,1kgにつき¥1,000というようにあらわし,金銭建は,¥100につき500gというようにあらわす。大部分の商品相場は数量建で示される。
◇1◇ 代価を求める計算
商品の代価は.単価と数量によって計算する。
商品代価=単価×数量
〔例1〕1箱25kg入りの商品26箱がある。単価が10kgにつき¥5,000のとき,代価はいくらか。
…(略)…
■8 商業計算3
金子幾平執筆
利息・割引料・年金の計算の単利と複利を実践的に詳述
第1章 単利利息および割引料の計算
第2章 複利利息の計算
第3章 年金の計算
付 録 応用計算問題
256頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.1
第1章 単利利息および割引料の計算
1.期日や期間を求める計算
利息や割引料を求める金利計算には,その計算の基礎となる期間や,期日を正確に求めることが必要である。この計算方法には各種の方法が考えられるが,要は計算者が,もっとも簡単で正確に求められると思う方法を選択すればよい。現在,一般的に用いられている計算方法について解説してみよう。
◇1◇ 期間を求める計算
期間を求める計算には,つぎの条件がある。
a 片落し
初日,あるいは期日のいずれかを計算に入れない方法で,日数計算のもっとも一般的な方法である。民法,手形法ともに期日を決定する場合はこの条件により計算される。
b 両端入れ
初日,期日ともに計算に入れる場合で,利息や割引料など銀行の受取る利息の場合はこの条件が多い。
c 両落し
初日,期日とも計算に入れない場合で,一般的な実務計算には,あまり用いられていない。
つぎに,例題により各種の方法を用いて算出してみよう。
…(略)…
■9 珠算の検定試験
光松秀一執筆
検定が珠算教育に果たす役割と,いかに活用すべきかを記述(資料は旧規則)
第1章 総論
第2章 制度上の諸問題
第3章 制度と運営の実際
第4章 数字平均使用の根拠と実際
第5章 計算量による分析
第6章 検定試験と暗算
第7章 検定試験と応用計算
第8章 検定試験と開法
第9章 検定試験と学習指導
208頁 本体1,456円+税
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P.1~2
第1章 総 論
1.序 言
珠算の検定試験にはどのような意義があり,どのような内容や方法で施行されているものか。そして珠算の学習指導者としては,どのような心構えで検定試験に対処すべきものであるか。こうした意図を中心に,いろいろの角度から検討を加えてみよう。
2.起 源
…(略)…
珠算教育をどのようにして,より効果的に行なうかについて,当時の私塾では相当に苦心されていたであろうと想像されるが,三重県の百日算・共興学校では,技能段階別にグループを設け,そのグループを昇級させるために,競算会を催して成果をあげられたように聞いている。
こういう競算会のような催しは,競技会の一種とも思われるが,また,見方によっては検定試験の芽生えとも考えられるのである。進級の願望や感激によって,学習意欲を奮い起こさせる着想は,進級試験として長い間,塾の重要行事として効果をあげていたが,これは,やがて検定試験へと成長を遂げる母体となった ようである。
…(略)…
■10 珠算の競技会
岡保執筆
競技会の目的と、その運営方法・選手養成について詳述(資料は旧規則)
第1章 総論
第2章 珠算競技の運営
第3章 珠算競技の内容
第4章 珠算競技会の実際
第5章 指導法
208頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.1~2
第1章 総 論
1.序 言
珠算の競技にはどのような意義があって,どのような内容や方法で行なわれているものか。そして珠算の指導者としては,珠算の競技についてどのような考え方を持ち,どのように指導すれば良いのだろうか。また,最も有効的な選手の育成方法には,どのようなものがあるのだろうか。
大小の規模を持つ珠算の競技について,本編では,あらゆる角度から検討を加えてみよう。
2.意 義
珠算の競技会は,検定試験とともに,学習者の技能向上を図るために欠くことのできない奨励方法とされている。
検定試験が,珠算の学習効果を判定評価するのに最適のものとされ,加減の基礎的段階から始まり,乗除算を加え順次相当高度なものまでを数段階に分け,級あるいは段によって認定されているのに対し,競技会は,珠算学習指導に際し,技能向上への意欲を刺激し,より高い水準に向かって努力をさせるため,校内・塾内における小規模のものから,全国的なものに至るまで,数え切れぬさまざまな競技会が開催され,無限の学習目標として大切な役割を果しており,珠算学習指導上の条件として,共に今日の隆盛を見るに至ったのである。
…(略)…
■11 珠算作問法
中川忠義・永瀬定夫執筆
競技会や検定試験など各種の段階の作問方法について記述
第1章 総論
第2章 指導のための作問
第3章 検定試験問題の作問
第4章 競技会問題の作問
付録1 全珠連珠算検定試験作問要領
付録2 全日本珠算選手権大会作問要領
付録3 全日本通信珠算競技大会作問要領
200頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.1
第1章 総 論
1.序 言
珠算の問題集や指導書が数多く発行され,その利用度が高まるにつれて,珠算の学習指導は,これらの刊行物に依存することになり,作問は専門化するとともに,一般の珠算教師は次第に作問から遠ざかる傾向にある。
しかし,直接作問する機会が少なくなろうとも,作問はあくまで珠算教師自身のものでなければならない。すなわち,生徒の使用する問題集や指導書は教師が選んで与えるはずである。この場合,作問上からみて,その良否を判別することは教師の重要な仕事であり,重大な責任をおわなければならない。また,採用した問題集や指導書の作問上における長所・短所を十分理解して,これを指導上に生かすべきである。ときには,その不備を補う指導も行なわねばならないであろう。さらに,検定試験の問題がどのように作問されているかを知ることは,全般的な珠算学習指導の上に検定試験を生かすことからも,また,円滑な受験指導を生み出すことからも重要な仕事であるといわねばならない。
…(略)…
■12 特殊問題の作問と利用
永瀬定夫・中川家治執筆
単調な練習を興味あるものにし上達にも役立つ作問を詳述
第1章 総論
第2章 連乗除算
第3章 珠算指導の基礎
第4章 残高計算
第5章 連補算
第6章 メドレー算
第7章 定実除算
第8章 照合除算
第9章 等積乗算
第10章 循環積乗算
第11章 実・法・積または商の合計が特殊な数配列になる乗・除算
第12章 四則総合縦横計算
224頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.1
第1章 総 論
1.序 言
最近の珠算はとかく,当面の珠算検定や,競技会のための準備に終始している傾向にある。これは珠算が技術的なものであるだけに,ただ,漫然とした練習よりも,何か,はっきりした目標をもって練習したほうが効果がある。このことは誰でもよく知っていることである。そこで段階式になっている珠算検定を,下級より上級へとつぎつぎに受験させ,また,機会あるごとに競技会などに出場させるわけで,そのために,教師も生徒も,ときには珠算の練習に息のつまる思いがすることがある。その結果として,当面の目標とした検定試験や,競技会が終わった直後の一種の虚脱状態のときに,合否も未だ発表にならない前に,次の段階の検定試験や,かなり先の競技会のための練習をすることは,いたずらに疲労感を増し,かなりの生徒を,珠算の練習より脱落させる結果を招来する危険性もあるわけである。
そこで珠算の練習には,ときには変わった教材を使用し生徒を楽しませると同時に,練習効果もあげるという方法が望ましいわけで,ここに〝特殊問題〟の存在価値があるわけである。…(略)…
■13 珠算学校・塾経営の実際
小林弘執筆
珠算学校・塾の、教育の立場から行う経営法について記述
第1章 珠算教育のあらまし
第2章 教育とはどんな機構になっているか
第3章 いざ,経営,さてその条件は
第4章 どのように管理したらよいか
第5章 どのように教育を組み立てたらよいか
256頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.32~33
第3章 いざ,経営,さてその条件は
1.地理的,位置的制約
珠算学校・塾を設立するためには,地理的な条件,そして,更に位置(所在地)の条件が重要である。地理的な条件というより地域的な条件というか,商業的地域(地帯)であったり,住宅地域において設立されている場合が多く,工場地帯にはあまり設立されていない。やはり,位置的にも人口が多く,また,交通が便利であり,勿論,教育上好ましくない遊興街・歓楽街等の近辺は避けるべきである。…(略)… 子どもに手のかからなくなった家庭の主婦がアルバイトとして,自宅の一室を利用して開塾している傾向が強くでてきている。これらの塾がより環境や教育条件を改善し,旧来の珠算学校・塾に発展することを期待したい。教育企業としてやはり,地理的・位置的条件という見地より考えられる珠算学校・塾でありたい。
2.理想的な校舎をめざして
まず,最低限度,生徒1人について1坪(3.3㎡)の面積は必要である。珠算学校・塾の場合は,約1時間の授業が標準であり,2~3時間の回転式に行なわれているため待合場所(待合室)の必要に迫られ,待っている生徒がたむろしているケースが多い。少なくとも雨を凌げる場所が必要である。…(略)…
■14 珠算と計算機
袴田良雄執筆
各種の計算機を解明し,珠算との関連において考え方を記述(昭和58年現在の内容)
第1章 機械について
第2章 計算機械の種類と変遷
第3章 電卓
第4章 電卓とそろばん
第5章 電卓と電子計算機
第6章 電子計算機について
第7章 マイコンとパソコン
第8章 パソコンとそろばん
第9章 現代におけるそろばん
144頁 本体1,456円+税
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P.27
第4章 電卓とそろばん
◇2◇ そろばんの特長
次に,電卓と対比しながら,そろばんの特長について見てみることにする。
(1) 計算能力がつく。
電卓は,いくら練習しても操作が早くなることはあっても,計算する者に計算能カがつくわけではない。そろばんも,ある意味では練習することによって,そろばんの操作が早くなるわけであるが,操作が早くなることは同時に計算カもついてきているのである。
この計算力がつくということには,2つの意味がある。1つは文字通りそろばんを使って計算する能カがつくということである。これは,補数が活用できる,かけざんの九九がいえるというような,もっとも基本的な能力が身についてくるということである。そろばんは,電卓と同様に数値をそろばんに入力する(置数という)のであるが,同時にそろばんを使いながら人間が演算も行なっていく。ここにそろばんを操作する人に計算能力が要求されると同時に,計算能力を更に伸ばしていくという大きな特長があるのである。
計算能力がつくというもう1つの意味は,珠算式の暗算能力が つくということである。…(略)…
■15 日本珠算史
戸谷清一執筆
珠算の発生から発達の歴史を社会的背景を関連させて記述
第1章 そろばんの伝来
第2章 江戸時代
第3章 明治・大正時代
第4章 昭和時代
付録1 算法史-籌からそろばんへ
付録2 日本珠算史年表
192頁 本体1,456円+税
内容を読む
P.9~10
2.日本への伝来
◇1◇ 伝来した時期
中国で発達したそろばんが,いつごろ日本へ伝えられたか,その時期は明らかでない。
対明貿易に中国の文物の名称を知る必要から中国の「魁本対相 四言雑字(p.3参照)が南北朝時代に日本で復刻された。この本には,そろばんの絵が記載されているから,貿易に携わる人々のなかには,計算器としてのそろばんの知識をもっていたものもあると思われるが,そろばんが日本人に使われていたという資料としては次のようなものがある。そして一般には,そろばんの伝来時期は室町時代末期であろう,といわれてきている。
日本考
侯継高「全漸兵制考」の付録に「日本風土記」がある。この「日本風土記」は,中国沿岸を跳梁した倭冠に対し,日本の状況や言葉(日本語)を知る必要から,1573年ごろまでの日本の歴史・地理・風俗,その他いろいろな単語について漢字・発音・ひらがなを掲げたもので,「日本考」(1592~1593)は,これを改題して復刻したものである。この本の巻の四,器用の項に,
算盤 所六盤 そおはん
とある。これは中国語の算盤(Suan-pan) を,日本人は所六盤 (Suo-liu-pan)と発音し,これを日本字で「そおはん」と書くことを説明したものである。…(略)…
※「内容見本」